学生服は16世紀のイギリスが起源 ― 制服の昨今(その2)

前回に引き続き、学生服・制服の話です。

イギリスでは、学校が制服を決めるときには、「性別、人種、障害、性的指向、性別適合、宗教または信念に基づいて差別してはならない。」という政府からの指針があることをお伝えしました。ここで改めて考えると、「ん?性別で差別するなっていうなら、男の子の制服と女の子の制服を作るのはどうして?」ってちょっとひっかかってしまうかもしれませんね?これは、「2種類の選択肢を与えているだけで、どっちを着てもいい。選ぶのは子ども自身。」ということなんです。 ここ数年でその気運はとても高まってきていて、小学校では中学校よりも敏感に「ジェンダーフリーポリシー」を導入するようになってきているそうです。そのポリシーとは、「男の子と女の子の両方が、学校指定のスカートまたはズボンのいずれかを着用できるようにする。もしくは、ユニセックスのユニフォームを導入する。」というものです。

暑さをしのぐためスカートで登校する男子生徒達
【by Euronews】

数年前、イギリスのデボン州にある中学校でこういうことがありました。その日は40年ぶりの一番暑い6月になるとの注意喚起がなされたほどの炎天下でした。あまりの暑さに、数人の男子生徒が短ズボンで登校したところ、「学校指定の制服でないから駄目だ!」と校長から叱責されたそうです。そう言われた男子生徒達は翌日「学校指定のスカート」で登校、校長はぐうの音も出なかったとか。それはいいアイディアだと、その次の日には50人以上の男子生徒のスカート姿が見られ、これを機に理不尽な制服のルールを変えようと生徒たちの間で活動が始まったそうです。このニュースは、「よくやった!」とあちこちで絶賛され、イギリス国内にとどまらず世界中に広まったので、ご存知の方もいるかもしれませんね。

青いロングコートと黄色いハイソックスは500年以上変わっていない
【by Christ’s Hospital】

このように、ウィットが効いた行動をきっかけに差別を無くし変わっていこうとする学生たちの姿がある一方で、伝統を重んじる姿もあります。これは前回の記事に登場した「世界で一番初めに制服を作った」クライスト病院の学校でのことです。驚くことに今でも学校としてしっかり存在していて、なんと500年以上続いているのは学校だけでなく、今だに同じ制服を維持しているんです!2014年に、学校側は制服を近代化しようと試み、事前に生徒にアンケートを実施しました。そこでは、95%もの生徒が最新のイケてる制服より、伝統的な制服を維持することに投票したという予期せぬ結果が出たのです。

どちらのエピソードもいかにもイギリスらしくてほほえましいですね。

Previous
Previous

クマのプーさんとその仲間たち ― 素朴な会話の中には名言がいっぱい!

Next
Next

学生服は16世紀のイギリスが起源 ― 制服の昨今(その1)