学生服は16世紀のイギリスが起源 ― 制服の昨今(その1)

イギリスでは新学年が始まるのは9月です。日本のような入学式や始業式といった式典は一切なく少々味気ない始まりではありますが、入学の準備というのは親御さんにとってはやなり大変なもの。夏休みの間にぐんぐんと成長した子どもの制服が小さくなってしまってる!とあわてるのもこの時期のあるあるエピソードでしょう。今日は、その制服にまつわる話を2回にわたってご紹介します。

学校で着るユニフォーム・制服というシステムは、今では世界中で取り入れられています。実はこの制服、世界で一番最初に始めたのは16世紀のイギリスの学校だったんです。1552年にロンドンに設立されたクライスト病院などのチャリティー・スクールが、生徒に制服を使用したのが最初でした。当時は、こういった学校へ通う貧しい子ども達への救済活動の一つで、聖職者が身に着ける黄色のハイソックスと青いローブに似せた制服を支援したといわれています。(ポートレート写真: by Christ’s Hospital)このチャリティとして始まった制服が、子ども達の間で貧富の差が出ないような配慮もできるということから、世界中の学校に広まっていきました。

現在のイギリスでは、幼稚園・保育園では私服、小学校から制服を着る、というのが一般的です。
様々な理由や背景はありますが、大まかにいうと、保育園・幼稚園の乳幼児期には、「みんなちがっていい、ユニークチャイルド」「子ども自身の興味を引き出し、それを伸ばす」というイギリスの幼児教育の理念に重きを置いているので、子ども達は自分の好きな服装で登園するというのがほとんどです。また、汚れやすい子どもの服をとっかえひっかえする親御さんにしてみれば、制服よりなんでもいい私服は助かる点かもしれません。
一方、小学校へ上がる時期に差し掛かると、今度は4~5歳児に芽生えてくる「身の回りの世界への理解」「社会とのつながり」といった点にフォーカスするため、帰属意識を高めることができる制服を導入する小学校がほとんどになります。また現代においても、前述の「貧富の差がで出ない」という点が、制服を導入する大きな理由の一つとなっています。

イギリスでは、学校の制服は法律で決められているわけではないのですが、政府は制服を決定する際の指針として:

「各学校が制服を決める際には、性別、人種、障害、性的指向、性別適合、宗教または信念に基づいて差別してはならない。」

としています。このように平等であることを考慮に入れ、更には、制服のコストが男の子と女の子で同じであること、適度に低コストであること、宗教の自由を許容すること、なども必要とされています。ここにも、インクルーシブの概念がしっかり入っているのがわかりますね。

さて、次回はそんなイギリスで実際に起こった制服にまつわるエピソードをご紹介します。お楽しみに!

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