みなさんは「レント(Lent)」という行事を聞いたことがありますか？前回のパンケーキデイの記事でも少しご紹介したのですが、イースター（キリストの復活日）に向けて４０日間の断食を行う「レント（四句節）」と呼ばれる期間がキリスト教にはあります。十字架に磔されたキリストが生き返ったとされる復活日（イースター）を祝うために、それに向けてのレントの期間中は断食で身を清め十字架にかけられたキリストの苦悩に思いを馳せる・・・というのが、そもそもの儀式でした。

それも今となっては、イギリスでも実際に断食を行う人はかなりの少数派です。ただその代わりに、断食とまではいかなくても何か自分の好きなものを４０日間我慢をするという光景はあちこちで見られます。例えば「大好きなチョコレートは一切口にしない！」とか、「禁酒」などはよく耳にする宣言です。毎年挙げられる「我慢するもの(things to give up)」のメジャーどころは：

　　・　チョコレート
　　・　酒類
　　・　甘い物・お菓子
　　・　肉類
　　・　炭酸飲料
　　・　コーヒー
　　・　ソーシャル・ネットワーク

などです。最近はビーガンが流行っていて、レントの間だけでも動物性食品は取らないと始めた人が、レントが終わってもそのままビーガンに転向するといった話も聞きます。また、普段ストレスが多い人達なのでしょうか、「悪態をつかない(No Swearing)」などという意見も上位にありました。

2021年のレントの過ごし方

そんなレントですが、今年はちょっと違った視点からアプローチしている光景が見られます。去年からのコロナ禍で、何かと我慢を強いられている私たち。「もうこれ以上、何を我慢しろというの?!」と思う方も多いでしょう。そこで、今年のレントは、ちょっとプラスの方向で何かを行ってみては？というアイディアがいろいろ出てきています。ここでは、家庭での過ごし方・家族との過ごし方に焦点を充てたものをいくつかご紹介します。

「ゴシップ情報に付き合わない」
有用な情報が簡単に手に入る世の中になりました。それと同時に、不確かな情報で不安を煽られてしまう機会も増えてきています。無責任な情報に踊らされて気分が落ち込んだり不安になったりしないよう、インターネットサーフィンをやめて、健康的な心持を保ちましょう。

「残業はしない！」
在宅勤務が多いこの頃、なかなか仕事とプライベートのオン・オフの切り替えが難しくなったりしませんか？「今日は〇〇時以降は絶対仕事をしない！」とすっぱり決めて、その後の時間は自分の好きなことに使ったり、家族と過ごしたりして、メリハリのある生活リズムを作ってみてはどうでしょう？

「スクリーンタイムを減らす」
デジタルデバイスが手軽になった反面、いろいろと「ながら」でできてしまう生活です。そこで、例えば家族全員のスクリーンを見ている時間を３０分減らして、その時間を一緒にボードゲームやカードゲームをしたりするというような家族団らんの時間にかえてみましょう。

「家族のいいところを伝え合う」
一日３個などと決めて、家族でお互いのいいところを伝えあいましょう。これは、子育てにも役立ちます。「お母さん、お父さんはちゃんと見ているよ」ということが伝わります。また、大人でも「いいね！」と言ってもらえるのはやはりうれしいもので気分も前向きになります。その時に、具体的にここがいいと伝え合うと効果的です。「へ～、そんなところも見ていてくれてるんだ」とか、「そこがいいって思うんだ」などと、新しい発見があるかもしれませんよ。

「ありがとうと声に出して伝える」
１日に一つからでいいです。当たり前だと思わずに、普段何気なくやってくれている相手行動に「ありがとう」と声に出して伝えましょう。心からの一言で、苦労も報われます。

これらを実行するときには、「だってレントの期間はこうするって決めたから」という免罪符を使うと効果的です。「仕事ちょっと忙しいしなあ・・・」「面倒だなあ・・・」という思いがよぎっても、「いや、レントで決めたことだから、４０日間だけはやってみよう！」と気分を切り替えると実行に移しやすくなります。また、お互いを励まし合えるので、家族全員で一緒にチャレンジするのもいいですね。

不要不急の外出を控えている今、家の中で過ごすことが多くいろいろなストレスをお互いに感じたりすることは仕方ありません。それでも一番身近にいる家族とは、やはりできるだけ笑顔で過ごしたいものです。そんな日々を過ごせるよう、このレントをいいきっかけに、少しでも明るく前向きに過ごしていければいいですね。