シリーズ【イギリスの幼児教育】 第10回: イギリスにおけるナニーの歴史 その3「メリーポピンズは最も有名なナニー?」
前回と前々回に続いて、今回はイギリスにおけるナニーの歴史の最終回になります。
「スーパーカリフラジャリスティックエクスピアリドーシャス!」という、早口言葉のようなこのフレーズを聞いたことがありますか?
これは、1964年に公開されたミュージカル映画『メリーポピンズ』に出てくる魔法の言葉です。メリーポピンズは、子どもたちのいたずらが原因で、前のナニーがでやめてしまって困っているバンクス一家に、ある日、パラソルを片手に空から舞い降りてきた不思議なイギリス人のナニーです。
しつけには厳しいけれど、明るくて、愛情深く、歌が上手で、不思議な魔法の言葉を唱えて、困ったことを何でも解決してしまう。忙しい両親の元で寂しい思いをしている姉弟は、落ち込んでいるときにハッピーにしてくれるそんなメリーポピンズに、たちまち夢中になります。そして、仕事にかかりきりで、子どもたちと距離のあった厳格な父親の心さえも、次第に溶かしていきます。
ユーモアと不思議な魔法で、子どもたちが一番望んでいた本来の家族の絆を蘇らせたメリーポピンズ。それは、最も近くで子どもを見守るナニーという存在だからこそできたのです。
親と相談しながら、一人ひとりの子どもに見合った子育てをサポートできるナニーという保育の形は、長い年月を経て、今もイギリスで続いています。そんなナニーが、共働きが一般的になった日本でも、保育の選択肢の1つになるかもしれませんね。