『ハリー・ポッターの世界から学ぶ』シリーズ:ハウス制度とは?(その3)
前回の記事では、寄宿学校の寮制度から始まった『ハウス制度』は、イギリスの小中学校で広く導入されているということをお伝えしました。今回は、毎日の学校生活で、『ハウス制度』がどのように使われているかをご紹介します。
「グリフィンドールに3ポイント!」
ハリ・ーポッターの世界では、真っ白な髭を蓄えたダンブルドア校長先生がこのように声高らかに告げると、ハリーとその仲間たちは歓喜に満ちた声を挙げます。この場面には、学年末の時点で最も多いポイントを獲得したハウスに与えられる「ハウス・チャンピオン」になるためにハウス同士がポイントを競い合っている、という背景があります。
“どれくらいポイントが貯まったかな?” シールの代わりに、ハウス・カラーに合わせたトークンを使う学校もあります。
現実の学校生活でも、善い行いや優れた結果を出した子ども達に、教師たちはポイント(学校によっては、スター、メリット・・・など呼び方は様々)を与えます。小学校では、分かりやすいように制服や連絡帳にシールを貼ります。お迎えに来た家族やケアラーに一目散に駆け寄って、自慢げにシールを見せる子ども達の姿はとても微笑ましいものです。子ども達はそれぞれにこのポイントを貯めていって、例えば25ポイント、50ポイントなどに達すると「賞状」が出て、集会の場などでみんなに称えられるという機会も設けられています。このポイントは、テストで良い点を取ったというようなアカデミックな結果に対してだけでなく、善い行い(例:転んで泣いてしまったお友達をなぐさめてあげた)にも与えられ、そうすることで子ども達は正しい生活態度を身に着け、他者に対する思いやりを育み、それが評価されることで自己肯定感や達成感を促せるような仕組みになっているわけです。そうすると、いわゆる「先生にチクる」というような(英語では「チクる人」を “tell-tale” と呼びます)マイナスな評価につながるコントだけでなく、「〇〇ちゃんがこんな風にいいことをしてくれたよ」というような、ポジティブなコメントが子ども達から教師へ伝えられる場面にもつながっていきます。
こうした個人で獲得したポイントは、同時に所属するハウスのポイントとしてもカウントされます。様々な学校行事がある中で、ハウスポイントを一気に稼ぐイベント、それが運動会です。イギリスでは、運動会は気候のいい6月頃に行われるのが一般的なので、学年末の7月前に行われる最大かつ最終イベントということで、とっても盛り上がります。
次回からは、この『ハウス制度』が教育上どのような効果に貢献しているのか、という点をご紹介していきます。